どんどこ山のはる
 

ほかの山さ、とっくに はるさなっているだに
どんどこ山さ まだふゆだっだど。

 

どんどこ山のはるの かんりにんさ
ほかの山さより ええはるにつづくとびらをさがしていたんだど。
 

 
「こんなみすぼらしはるさ、いらねえべ」

 
ほかの山さより、ゆたかなはる
さくらがきれいなはる
ふんわりはるの色・・・
 
だども、なかなかみつからなかっだど
 

そうしているうちに どんどこ山さにすんどるもんは となりの山さにいっだど
 


ふしぎにおもった となりの山のかんりにんば どんどこ山に「えんやほいさ」きたど
 

 
「どんどこ山のはるさ、まだですか?」
「まだみつからねど」
 

ふたりつれだって はるさ さがすことにしたんだど
 
「はるはどこだべか?
 はるはどこだべか?」
だども とっくにはるがすくなくなって みつからねど
 
 

「このはるは?」
どんどこ山のかんりにんのいえのよこに はるがあっだど
「きょねんのはるだど」
どんどこ山のかんりにんは そのはるがきらいだっだど
「このはるじゃだめなん?」
「こんなみすぼらしいはるさ、いらねど。
それにいまさら こんなみすぼらしいはるは ろんがいだど
おいは あきらめねど !」
 

「はるははるだよ」
「だれもこないど」
「もっといいはるをさがすよりも このはるをそだてようよ」

「だども いままでのくろうが むだになるど」
「そのくろうさ バネにして はるをそだてるど。
 ん
 くちょうが うつっちゃった」
 

 
「どんどこやまさに、はるがきたどー!」
 
「どんどこどんどこ」
 
はるは はるだど。どんどこ山のかんりにんば、きづいてながだども
ふゆのあいだに じめんさ こおったり とけたりで たがやされて つちはこえていたど。

どんどこ山さ たねまいて らいねんのはるさ よくなるど。
 

いのちがひろがる夏がきたど
はるさ、おくれてもなつは どんどこ山さに ちゃんときたんだど
それで どんどこ山さのかんりにんば にんまりしたんだど
 
おしまい